「AI×銀行」の未来——あおぞら銀行、NTTデータ、Kongが語る次世代API戦略

2026年3月12日、ステーションコンファレンス東京にて開催された「デジタルバンキング展」。Kongは「『AI×銀行』の未来。あおぞら銀行とANSER責任者が挑むエージェント協働の次世代API戦略」というテーマでセッションを実施しました。
登壇したのは、あおぞら銀行 執行役員 CIO副担当の楠田佳嗣氏、株式会社NTTデータ オンラインバンキングプラットフォーム「ANSER」責任者の磯村大誠氏、Kong株式会社 代表取締役社長の有泉大樹の3名。
AIエージェント活用を見据えた金融インフラの未来図と、その実現になくてはならないAPI基盤の役割について、対談しました。
目次
金融インフラ「ANSER」がAPI基盤にKongを選んだ理由
AIエージェント時代に求められる金融インフラのパラダイムシフト
金融インフラ「ANSER」がAPI基盤にKongを選んだ理由
冒頭で有泉は、Kongを「API管理プラットフォームを中核とする企業」として紹介。AIエージェントの活用が広がるほど、APIのコスト、ガバナンス、セキュリティを統合的に管理する基盤の重要性が高まると説明しました。
セッション前半では、NTTデータの磯村氏が、同社のオンラインバンキングプラットフォーム「ANSER(アンサー)」の歩みと、API管理基盤を刷新した背景を語りました。
ANSERは誕生から45年、電話やFAX、パソコン、スマートフォンと、時代の変化に合わせて形を変えながら、一貫して「利用者と銀行をつなぐ」役割を担ってきました。磯村氏は「つなぐ」というコンセプトそのものがAPIの精神と深く重なると語ります。

今回のANSERのAPI管理基盤の刷新は、長年使ってきたAPI管理基盤の更改が出発点でした。既存ベンダーのサポート期限なども見据え、複数社と概念実証(PoC)を重ねた結果、NTTデータはKongを選定。理由として磯村氏が挙げたのは、以下3点です。
- 金融機関向け基盤に求められる安定性と性能
- NTTデータ自身が理解を深めながら責任を持って提供できる体制
- 5年後、10年後を見据えたKongの将来性
磯村氏は、AIの広がりを受けて、金融サービスの利用者が人からAIへ広がっていく未来を見据えていた点にも触れました。その上で、AIの仕組みと親和性の高いプラットフォームを早くから志向していたことが、Kong採用の後押しになったと説明します。安定運用だけでなく、その先の進化まで見据えて基盤を選んだことが、本導入の要点でした。


「AIに選ばれる銀行」という新しい競争軸
続いて「『AI×銀行』の未来」というテーマでパネルディスカッションが行われました。前半では「『AIに選ばれる銀行』になれるか?」をテーマに議論がなされました。
あおぞら銀行の楠田氏は、2022年末のChatGPTの登場を、かつてのインターネット革命に匹敵する衝撃として振り返りました。
「銀行員がそろばんを叩き、方眼紙に鉛筆で売上を書いていた時代から、スマートフォンで場所を選ばず仕事ができるようになるまで、約30年を要しました。しかし、生成AIがもたらす変化は、その30年分の進化をわずか2、3年に圧縮している感覚があります。」

現在あおぞら銀行が進めるAI活用は、単なるコスト削減のための効率化ではありません。楠田氏は「業務の細分化や属人化が進む中で、AIによって直接的に顧客価値につながらない事務的な仕事を減らし、浮いた時間をお客様の悩みや課題に向き合う時間に充てることこそが本質だ」と断言しました。
議論はさらに、顧客接点の劇的な変化へと踏み込みます。楠田氏は、お客様にとっても「銀行との手続きに費やす時間は、生活の中でできるだけ無くしたい時間」であるという現実に着目しました。
24時間365日動くAIエージェントが、個人の代わりに最も有利な金利や最適なサービスを求めて銀行を比較し、取引を実行する時代。そこでは、これまで人間向けに磨いてきたブランディングやUI(ユーザーインターフェース)が、必ずしも通用しなくなります。
「人に刺さっていることと、AIに刺さることは同じとは限らない」と楠田氏。この視点は、銀行の競争条件が「人間による選好」から「AIによる論理的・高速な選定」へと移行する未来を予見させるものでした。
AIエージェント時代に求められる金融インフラのパラダイムシフト
AIが取引の主体となる世界で、銀行のインフラはどのような要件を満たすべきでしょうか。NTTデータの磯村氏は、現場の視点から2つの核心的な課題を提示しました。
1.性能:爆発的に増えるトラフィックへの即応
AIエージェントは人間の活動時間を超え、24時間365日、自律的に動き続けます。爆発的に増えるトラフィックに対し、常に高いパフォーマンスで応え続ける基盤が絶対条件となります。AIは使い勝手の良いUIではなく、機械にとって信頼できる高速なAPIを優先して選びます。APIそのものの品質が、銀行の直接的な競争力になります。
2.認証:セキュリティ概念の根本的な見直し
これまで銀行取引の安全は、特定のブラウザや画一的な操作手順などの「UIによる制約」と「認証」をセットにすることで担保されてきました。しかし、自由度の高いAIエージェントが介在する場合、この前提は崩壊します。API側でその取引を受け付けてよいかどうかを、能動的に判断する概念が必要になります。人間向けの最適な「画面」と「認証」で守る時代から、API自体が信頼性を自律的に担保する時代へと、セキュリティの考え方そのものが劇的な転換期を迎えています。
API共通基盤が解く、銀行の“呪縛”と業務の再定義
パネルディスカッション後半、議論は日本の地域金融が長年抱えてきた「共同化・共通化」という積年の課題へと及びました。
今まで多くの金融機関が、金融庁や日銀が進める「地域金融強化プラン」や「経営強化法」に基づく共同化に挑みながらも、元帳システム(勘定系)の違いや、専用端末の壁に阻まれてきました。
楠田氏は「銀行ごとに書類の形式や記入ルールが異なり、手続きの流れも統一されていない現状は、お客様にとっても大きなフラストレーションとなっている」と指摘。
しかし、API基盤をレイヤーとして活用すれば、この物理的な壁を乗り越えることが可能になります。
「バックエンドのシステムが異なっていても、API層でルールを共通化できれば、お客様へのインターフェースを統一できる。これは、30年来できなかった共同化を実現する大きなチャンスです。」

磯村氏も、人材不足が深刻化する中で、「連携の標準化を進めること」の重要性を強調。事務に直結するプロセスをAPIレイヤーで吸収し、業界全体で標準化することで、フロント側のAIやサービスを自由に発展させつつ、バックエンドの事務負担やコストを大幅に削減できます。
API基盤は、単なる接続技術を超え、銀行の構造的課題を解決する「経営基盤」としての役割を担い始めています。
銀行の存在価値:AI時代の「信頼」とは
パネルディスカッションの終盤、議論は「銀行の存在価値」そのものへと収束しました。
AIエージェントが複数の部署をまたぐ業務をボタン一つで処理し、人間は最終確認のみを担う世界では、既存の組織編成や責任の所在、決済の在り方では対応しきれません。
「組織の在り方や牽制の仕組み、すなわち広義のガバナンスを再確立することが、AI活用の大前提となります」と楠田氏。システムだけでなく、組織とルールの再設計こそが、銀行が直面する最大の挑戦であると語りました。
最後に磯村氏は、これからの銀行のあり方について次のように示唆します。
「これからの銀行には、お客様にとって『ピタッと横にいてくれる存在』のような役割がより求められていくのではないでしょうか。
その前提には、金融機関様が何世紀にもわたって築かれてきた『信頼』があります。人の行動に影響を与えるような価値提供は、強い信頼関係のもとで初めて成立するものであり、APIを通じて、その信頼をより身近に感じられる世界を目指していきたいと考えています。」
まとめ:次世代金融インフラの実現に向けて
AI時代の銀行競争は、単に新しい機能を競い合うものではありません。あおぞら銀行、NTTデータ、Kong三者のディスカッションから浮かび上がったのは、AIにも、お客様にも選ばれるための、真に強靭で柔軟な次世代金融インフラの姿でした。その実現のために必要なことが以下3点です。
- 顧客接点の激変を受け入れ、認証のパラダイムシフトに対応する
- 銀行の枠組みを超えた連携・共同化によって業務構造を抜本的に変革する
- すべての根底に「お客様を守る」という揺るぎないガバナンスを敷く
Kongはこれからも、API管理プラットフォーム「AI Connectivity Platform」の提供を通じ、金融機関の皆様が「AIと共に、お客様にピタッと寄り添う」未来の実現に向けて、共に歩み続けます。
