2026年01月28日

Kong API Summit 2025 開催レポート 〜Kong基調講演〜

APIファーストが切り拓くAIエージェント時代

2025年11月12日、都内で開催された「Kong API Summit Japan 2025」は、多様な来場者を迎え、盛大に幕を開けました。

会場にはITエンジニアやアーキテクトのみならず、経営層や事業責任者、DX推進担当者など、AI活用とAPI戦略の双方に関心を持つ参加者が集結。開始前から場内は高い熱気と期待感に包まれていました。

基調講演のテーマは「No API, No AI, No FUTURE」。AIエージェントが急速に普及している中、AIを企業の実務へ定着させるには「API基盤の整備」が不可欠であるというメッセージを提示するものです。

基調講演の冒頭には、Kong株式会社 代表取締役社長の有泉大樹が登壇。続いて、共同創業者兼CTOのMarco Palladinoが登場し、APIとAIエージェントが不可分である理由を、最新のグローバル動向と共に解説しました。

断片化されたAPIの“負の構造”

登壇者:Kong株式会社 代表取締役社長 有泉 大樹

API断片化が生む問題の本質

有泉の講演は、現代企業が直面する深刻な課題「API管理の断片化」への警鐘から始まりました。

部門ごとに乱立したAPI、用途別に導入されたSaaS、環境ごとに異なる運用方式――。統制が効かない状態で積み上がったAPI群は、企業システムに混乱を招いています。有泉は、この散在が引き起こす影響を「Security」「DevEx(開発者体験)」「Cost」「Innovation」の4つの視点で分析します。

「APIが散在し、統制が効かない状態では、イノベーションも開発者体験も損なわれます。」

APIの断片化は単なる技術的問題に留まらず、ビジネスの成長スピードそのものに悪影響を及ぼすという指摘です。

統合API管理がもたらす正の循環

続いて有泉は、「Negative Outcomes」から「Positive Outcomes」への転換図を提示。APIを統合的に管理することで得られる価値について説明しました。

  • 開発スピードの向上
  • 再利用性の確保
  • セキュリティの一元化
  • コストの最適化

これら複数の利点が、統合管理によって同時に生まれます。AIがデータやサービスへアクセスする際、APIはすべての“入り口”となるため、APIの健全性はAIのパフォーマンスや安全性に直結するのです。

「APIファースト共創宣言」と日本市場の広がり

次に紹介されたのは、Kongが掲げる「APIファースト共創宣言」。本宣言に賛同するパートナー企業11社も紹介されました。そのほか、金融、製造、流通、公共など、幅広い業界でAPI基盤への取り組みが進む現状が可視化されました。

「日本市場では、API基盤の整備に本気で取り組む企業が急増しています。」

Gartner MQ 6年連続リーダー選出

Kongが「Gartner® Magic Quadrant™(API Management部門)」において、6年連続でリーダーに選出された実績も報告されました。特筆すべきは「ビジョンの完成度」軸で最も高い評価を獲得した点であり、日本市場における信頼性の高さが裏付けられています。

AIエージェント時代のアーキテクチャ戦略

登壇者:Marco Palladino(CTO & Co-Founder, Kong Inc.)

有泉に続いて登壇したMarcoのセッションでは、ポケトークを用いたリアルタイム同時通訳がスクリーンへ投影されるという、先進的な演出が導入されました。

Marcoは、グローバル視点から「AIエージェントが業務の前提となる未来」を提示しました。

“Every Business Will Use AI Agents”

冒頭、Marcoは「AIエージェントはすべてのビジネスで使われるようになる」と断言。AIが単にコンテンツを生成するだけの存在から、外部ツールやシステムを“実行する存在”へと進化している現状を示唆しました。

「AIエージェントはLLMだけでは動かせません。APIやMCPツール群の整備こそが成功の分岐点です。」

レポート作成、分析実行、データ照会、業務フロー操作など、企業業務の多くはAPIで構成されています。これらをAIが代行・自動化するためには、APIによる能力の拡張が欠かせません。

AIプロジェクトの95%が成果を出せない理由

一方でMarcoは、「95%のAIイニシアチブが成果を上げていない」という厳しい現実も指摘。その主な要因として、以下の課題を挙げました。

  • LLMの選択や評価、品質管理の不適切さ
  • LLMトークンのコスト管理・レート制限の未整備
  • APIやMCPツールにおけるセキュリティや個人情報除去、アクセス制御の不足
  • プロンプト管理やバージョン管理、圧縮の統制不全
  • LLMメトリクスの収集・可視化不足によるレスポンス品質の未向上
  • パフォーマンス最適化(キャッシング・負荷分散)の不足

これらの課題を見聞きした多くの参加者が、深く頷き共感されていました。

MCPの標準化とAPIの再定義

Marcoが特に強調したのは、Anthropic社などが提唱する「MCP(Model Context Protocol)」の重要性です。これはAIエージェントに外部ツールを利用させるための標準プロトコルであり、APIの構造をエージェントが理解しやすい形に変換する役割を果たします。

「Kongを使えば、LLMの利用に統制を効かせつつ、既存のAPI資産をMCPサーバー対応に容易に変換できます。」

APIはこれまで以上に“AIが使うためのインターフェース”として、その重要度を増すことになるでしょう。

デモ:既存APIを活かしたエージェント構築(Volcano SDK連携)

続いて行われたデモンストレーションでは、AIエージェントが既存APIを活用し、業務プロセスを実行する一連の流れが披露されました。Kong AI Gateway、MCP Proxy、Volcano SDKが連携し、AIエージェントがAPIを通じて外部処理をスムーズに行う様子が示されます。

特に参加者の注目を集めたのは、「既存のAPI資産をそのままAIエージェントに接続できる」という点。オンプレミスシステムや複雑な基幹APIであっても、MCPを通じてAIエージェントが扱える対象となります。

“Connecting the Agentic World”

Marcoは最後に、「Connecting the Agentic World」という力強いメッセージを掲げ、講演を締めくくりました。

「AIエージェントを強化する最も確実な方法は、APIを整備し、エージェントが使える形にすることです。」

APIこそが、AIエージェントの能力を広げ、企業システムとAIをつなぐ“デジタル神経”となるのです。

まとめ:APIファーストがAI時代の競争優位を決める

有泉とMarcoの講演を通じ、一貫して発信されたのは「AI活用はAPI基盤の整備なしには成立しない」というメッセージです。

企業がAIエージェントや生成AIを事業へ本格的に取り込むためには、以下の要素を揃えることが求められます。

  1. APIの統合管理
  2. セキュアなAPIゲートウェイ
  3. MCPによるツール接続の標準化
  4. 再利用可能なアーキテクチャ

本基調講演は、日本企業がAI活用の実装フェーズへ移行する中で、「APIファースト」こそが強力な武器になることを、改めて確信させる内容となりました。

オンデマンド配信のご案内

当日のセッションの様子は、オンデマンド配信にてご覧いただけます。ご参加いただけなかった方や、改めて内容を確認したい方は、ぜひ下記リンクよりご視聴ください。

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