APIキーの概要とユースケース
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ソフトウェアは、通信やデータ共有のためにアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を使用します。しかしAPI側は、通信相手であるクライアントのアイデンティティ(身元)をどのように確認するのでしょうか。その解決手段の1つがAPIキーです。
APIキーとは、APIが提供する機能、データ、リソースへのアクセスを認証・認可するために使われる一意のコードです。開発者や企業はこのキーを使って、サービスへのアクセスを制御・監視し、セキュリティを確保します。
この記事では、APIキーの概要、その用途、種類、生成方法について説明していきます。
APIキーとは
APIキーは、用語自体でその定義が実に明確に示されているテクノロジ用語です。その名のとおり、APIにアクセスするためのキー、つまりIDや身分証に相当するものと捉えることができます。アプリケーション間で機密情報をやり取りする際、APIキーによって情報への不正アクセスを防ぐことができます。
APIキーは一般に、文字と数字で構成された文字列で、APIコールと共に伝送されます。APIキーを使うことでリクエストを識別できますが、物理的な身分証とは違って、ユーザー本人の識別はできません。
APIキーの用途
API側は、セキュリティの確保や、アクセスの監視と制限にAPIキーを使用できます。
APIはAPIキーを使って、リクエストの送信元クライアントを認証します。また、そのAPIを呼び出すことが認められているアプリケーションなのかどうかや、何にアクセスできるのかを確認する認可にも、APIキーを使用できます。
APIキーの一般的なユースケースは次のとおりです。
- セキュリティ:APIキーを組み込むことで、APIにセキュリティのレイヤーが1つ加わり、APIとクライアントの間で共有するデータの防御が強化されます。
- アクセス制御:権限を持つユーザーのみがAPIのデータやリソースにアクセスできるよう、APIの開発者が確実に制御できます。
- 追跡と課金:APIキーはAPIの使用状況の追跡や監視にも役立ちます。こうして得た情報を課金に適用したり、レート制限の管理や実施に利用したりできます。
- 連携:APIキーを利用してサービスやソフトウェアを連携することで、より自由な通信が可能になります。
このようにAPIキーは、APIセキュリティの確保や、効率的で責任あるAPI利用を支援し、ソフトウェア開発に貢献しています。
APIキーのメリット
APIキーは、アプリケーションへのアクセス、あるいはそのデータやリソースへのアクセスを制御、監視、保護するためのシンプルかつ効果的な手段です。また、革新的なアプリケーションの開発を実現する手段でもあります。APIキーを取り入れることで得られるメリットには、セキュリティ、アクセス制御、監視、使用状況の追跡、連携があります。
いくつかの重要なメリットについて、もう少し詳しく見ていきましょう。
セキュリティの強化
APIキーによってセキュリティのレイヤーが加わることで、開発者や企業は、サービス、データ、リソースへのアクセスの制御と可視化が可能になります。
- 認証:APIは、APIキーを使用してアクセスを認証できます。これによって、適切な権限を持つ呼び出し元やアプリケーションにのみAPIへのアクセスを認めたり、必要に応じてアクセス権を取り消したりできます。こうして機密データの防御を強化し、不正アクセスから守ることができます。
- 認可:特定のリソースやデータへのアクセスを認可するときに、APIキーによるアクセス制御を利用できます。
- 監視:悪意のある行動を検出し防御するためのAPI使用状況の監視にも、APIキーは役立ちます。監視を適切に行っている企業は、潜在的なセキュリティ侵害に反応するスピードを上げることができます。
流量制限:APIキーを使用してレート制限を適用することで、節度ある効率的なAPIアクセスを実現し、サービス拒否(DoS)攻撃を回避できます。
パフォーマンスの向上
APIキーを使ってAPIの使用状況を最適化することで、アプリケーションの応答性、スケーラビリティ、効率性を確保しやすくなり、アプリケーションのパフォーマンスが向上します。
- キャッシュ:APIが返すデータのキャッシングにAPIキーを使用できます。キャッシュが有効化されている場合、余計なAPIリクエストを新たに実行しなくても、キャッシュのデータにアクセスすれば済むため、開発者はAPIリクエストの回数を最小限に抑え、アプリケーションのパフォーマンスを向上させることができます。
- ロードバランシング:複数のサーバーやインスタンスの間でAPIリクエストをバランスよく処理するためにAPIキーを使用できます。これによってサーバーの負荷を抑制し、スケーラビリティを向上させることができます。
- 監視:パフォーマンスを監視することで、開発者はボトルネックの特定がしやすくなり、最適化を推進できます。
流量制限:APIキーを使用したレート制限を取り入れることで、前述したセキュリティ上のメリットに加えて、APIへの過負荷を防ぐ効果も得られ、アプリケーションのパフォーマンスが向上します。
柔軟性の向上
APIキーは、いくつかの面で開発の柔軟性向上にもつながります。
- カスタマイズ:開発者が作成するAPIキーは、キーごとに独自のアクセス権を付与できます。こうしたカスタマイズによって、ユーザーやアプリケーションのAPIアクセスを制御しやすくなります。
- 連携:開発者はAPIキーを使用して他のAPIと接続し、アプリケーション間でデータや機能をシームレスにやり取りできます。
- テスト:APIキーを使用して、本番環境へのデプロイの前にAPIのパフォーマンスや機能をテストできます。
- バージョン管理:APIのバージョンごとに異なる一意のAPIキーを作成することで、開発者は既存のアプリケーションに影響を及ぼすことなくAPIを修正できます。
APIキーの種類
APIキーにはさまざまな種類があり、ユースケースとセキュリティ要件によって使用する種類が異なります。APIキーの種類を適切に選択することで、機密データを保護し、不正アクセスを最小限に抑えることができます。
- パブリックAPIキー:公開されているデータへの読み取り専用アクセスで最もよく使われるAPIキーです。この種類のキーはクライアントサイドのアプリケーションに埋め込むことができます。
- シークレットAPIキー:機密データへのアクセスで使われるAPIキーです(書き込みのアクセス権を持つ場合もあります)。名前のとおり秘密のキーであり、公開すべきではありません。サーバーサイドのアプリケーションでよく使われています。
- JWTベースのAPIキー:APIアクセスの認証と認可にJSON Web Token(JWT)を使用します。モダンなウェブアプリケーションでの認証と認可で最もよく使われます。
- セッションベースのAPIキー:短時間のセッションにアクセス権を付与し、その後は期限切れとなる一時的に有効なキーです。
- スコープ設定されたAPIキー:APIが提供する機能やリソースを絞り、アクセスを制御するために使用するキーです。
クライアントサイドのAPIキーとサーバーサイドのAPIキーの違い
クライアントサイドのAPIキーと、サーバーサイドAPIキーは、使用する場所やセキュリティ保護の方法がそれぞれ異なります。
クライアントサイドのキーは、名前のとおりクライアントサイドアプリケーションで使用するキーで、公開されているデータへのアクセスや読み取り専用の処理を扱います。ユーザーやアプリケーションに対して公開されており、秘密にしておくことを意図したキーではありません。この種のAPIキーはレート制限やキャッシュで一般に使用されています。
サーバーサイドのAPIキーも名前のとおり、サーバーサイドのアプリケーションや、あるいはコマンドラインツールで使われます。この種のAPIキーは、書き込み処理や機密データへのアクセスに使用できます。エンドユーザーには公開しない秘密のキーであり、認証や認可を行う際によく使用されることから、よりセキュアなキーと考えることができます。
サーバーサイドとクライアントサイドのどちらのAPIキーを選ぶかは、ユースケースやAPIのセキュリティ要件に応じて決まります。公開されているデータや読み取り専用の処理を扱う場合には、クライアントサイドのAPIキーが適しているかもしれません。一方、機密データや書き込み処理を扱う場合には、サーバーサイドのAPIキーを選ぶのが適切です。
APIキーを生成する方法
APIキー生成の具体的な手順は、使用するAPIプラットフォームやサービスによって異なります。一般には、目的のサービスにログインし、適切なセクションや設定に移動して、生成するキーの種類を選択し、名前や記述子を指定します。そのうえで、キーをコピーして、パスワードマネージャーや暗号化ファイルに保管しておきます。
現実の鍵と同じように、APIキーも常に安全に保護しておくことが重要です。したがって、広範囲に向けた公開・共有はしない方がよいでしょう。安全な場所に保管したうえで、時々ローテーションを行って、不正アクセスのリスクを最小限に抑えるのが理想的です。
まとめ
この記事では、APIキーの概要、その用途、主なキーの種類について説明しました。
APIキーの一意のコードは、APIが提供する機能、データ、リソースへのアクセスの認証と認可に使われます。APIキーを導入することや、ユースケースに合った適切なキーを選択すること以外にも、アクセスの監視、継続的な制御、セキュリティの確保のために行う包括的な取り組みには、さまざまな要素があります。