Sky Italia、モダナイズとAPIOpsベースの組織への変革をKong Enterpriseで実現
イタリアの大手メディア/エンターテインメント企業
Sky Italiaは2003年創業のメディア/エンターテインメント企業で、ヨーロッパの代表的なメディア企業グループであるSky Groupの傘下にあります。Sky Groupの親会社はグローバルなメディア/テクノロジー企業であるComcast Corporationです。
Sky Italiaは何百万人ものイタリア人のテレビ視聴習慣を変えた企業として、イノベーションの代名詞になっています。最新のイノベーションとしては、Skyのコンテンツ、無料チャンネル、ストリーミングサービスを共通のインターフェースに統合した次世代スマートTVのSky Glassがあります。
そのほか、製品とサービスのラインナップには、Skyのコンテンツと主要アプリのコンテンツを楽しめるSky Qや、SkyのコンテンツをOTT(オーバーザトップ)で提供するNOW、ウルトラブロードバンドサービスのSky Wifiもあります。Ookla によると、Sky Wifiの通信速度はイタリアの固定ネットワークで最速です。
業界 メディア/インターネット
地域 ヨーロッパ
使用事例 分散化
導入時期 2021年
ビジネスの重要な成果につながる一元的なプラットフォームを模索
Sky Italiaは巨大なメディア/テクノロジー企業として、APIの標準化と管理について課題を抱えていました。
既にSOA(サービス指向アーキテクチャ)(English)は導入していたものの、Skyの収益創出事業を全方位的にサポートするプラットフォームの構築という野心的な目標を達成するうえで、既存のSOAでは不十分だと認識していました。
既存の環境はスケーラビリティに欠け、マイクロサービスアーキテクチャへの移行も困難です。そこで、効率化、コスト削減、低レイテンシを実現できる新たなソリューションを見つける必要がありました。
「業務サービスを支える統合プラットフォームの構築という目標を達成するには、柔軟なアーキテクチャで膨大なトランザクションを処理できるソリューションが必要になると考えました。新しいAPIOpsの考え方の土台となるソリューションです」
APIライフサイクル全体に対応するツールを構築してAPIOpsを導入
Skyは、API管理プラットフォームとしてKongを採用し、自動化、オブザーバビリティ(可観測性)、性能の3つを柱とする新しいインフラを実現しました。このインフラは、Kong Enterpriseのデプロイの柔軟性を生かしており、クラウドとオンプレミスの両方のサービスをサポートするハイブリッドモードで稼働します。
また、クラウドのKubernetesクラスタとマイクロサービスの管理にAWS EKSを使用し、AWSのマネージドオブザーバビリティスタックや、ポリシーによるIaC化と組み合わせて、スケーラビリティと可用性を兼ね備えたソリューションを構築しました。
なお、Kongのプラグインでこのアーキテクチャの機能を拡張し、セキュリティ、監視、変換、統合の機能を取り入れました。これによりシンプルなロジックをゲートウェイに直接実装できるようになり、開発の負担が減るとともに、Kong Enterpriseの機能の幅が大きく広がりました。
SkyはAPIOpsの方法論を導入するべく、APIの迅速な開発と継続的な改善を円滑化できる明確なプロセスを、DevOpsとGitOpsの組み合わせにより確立しました。
「この新しいプロセスで開発期間を短縮できました。インターフェースについて合意したら、迅速な使用とテストに直ちに移ることができます。チームの作業のスピードと効率が大幅に向上し、組織全体が成果をすばやく得られます」(Spadaccini氏)
成果技術面でもビジネス面でも成果を獲得
Sky Italiaは、Kong Enterpriseの導入を始めて以降、素晴らしい成果をあげてきました。技術的な面では、パフォーマンスは70%向上し、可用性は99.99%を維持しています。
「Kongを採用するうえで大きな目標としていたのは、ダウンタイムによる売上損失を出すことなく、膨大な量のトランザクションを処理することでした。我々はこれを実現したばかりか、目標を上回る結果を残しています」(Spadaccini氏)
Kongの導入によって、APIのデプロイに要する時間は80%短縮されました。APIOpsを通じた設計と構築で200以上のAPIを開発し、ポリシーの明確化、テストの増加、一貫性の向上といった成果が得られました。
Kongの導入はSkyのビジネス全体にも大きな成果をもたらしています。
市場投入サイクルも加速し、新たな製品やサービスのリリースが従来と比べ20%スピードアップしました。この速さがカスタマーエクスペリエンス全体の底上げにつながったほか、会社は新たな収益源を得られました。
「インフラのコストは30%、開発のコストは20%、それぞれ削減されました。リソースの効率的な利用を常に意識している我々にとって、このコスト削減はビジネス面で非常に大きな成果です」
考え方と手法を転換
Sky ItaliaがKongの導入で得た成果は、スピードアップや可用性向上、コスト削減だけではありません。Spadaccini氏が率いる統合チームは以前、APIに対するアプローチや、テクノロジースタックでAPIが果たす役割について、考え方を一新させる必要性を感じていました。
「新たな認識を浸透させるには時間がかかりました。従来と異なるアーキテクチャの開発が必要で、もちろん時間と労力を要しましたが、それに加えて、我々が保持するAPIの作成や測定に関しても、手法を学び直す必要がありました」(Spadaccini氏)
こうした認識の変化を後押ししたのは、チーム内でKong Enterpriseの利用に本腰を入れた開発者でした。この新しいシステムを試して、簡単に使えると知り、APIライフサイクル管理やAPIOpsの考え方を全面的に取り入れました。
「APIライフサイクルの設計、構築、管理に関するプラットフォームとプロセスを一元化したことで、APIに対する会社全体の認識を変えることができました。APIは後付けの要素ではなく、我々のテクノロジースタックの核であり、我々の戦略の土台になるものです」(Spadaccini氏)
「Kong Enterpriseを導入することで、包括的なAPIライフサイクル管理プラットフォームを構築できました。Sky Italiaはこのプラットフォームを活用して、パフォーマンスと可用性を向上させ、デプロイをスピードアップしています。APIベースのモデルを取り入れたことで、企業文化ががらりと変わりました。プロダクト指向のパターンに従って運用し、エンドユーザーのニーズに寄り添えるようになりました」