Kong製品は筋が良い。NTTデータ「iQuattro®」担当が語る、APIマネジメント・リーディングカンパニーの魅力

NTTデータ株式会社、Kong導入により開発コストや運用負荷を約30%削減

国内最大手SIが、サプライチェーンソリューションの基盤にKongを活用

NTTデータは豊かで調和のとれた社会づくりをめざし、世界50カ国以上でITサービスを提供しています。デジタル技術を活用したビジネス変革や社会課題の解決に向けて、お客様とともに未来を見つめ、コンサルティングからシステムづくり、システムの運用に至るまで、さまざまなサービスを提供します。

業界 IT

地域 アジア・日本

使用事例 ガバナンスと開発生産性の向上

導入時期 2018年

12/10(火)公開 QuiitaZine記事より転載

AIをはじめとする技術の進化スピードが加速する昨今、あらゆる業界でDXが進んでいます。DXと聞くと、もしかするとエンタープライズ企業が一社単独で進めていくような印象があるかもしれません。しかし、ここ数年で企業規模を問わず、様々な企業で先進技術やサービスを柔軟/継続的に取り入れていく活動が活発化している印象です。

そこでキーワードとなるのが、「API」です。自社だけでなく、他社のサービスも活用して経済圏を拡大させることで必要なリソースを最小限に抑え、DX推進の速度を早めることが期待できます。そのようなAPI時代の基盤として注目されているのが、APIマネジメントプラットフォームのリーディングカンパニーである「Kong」です。

2024年Gartner® Magic Quadrant™「APIマネジメント」部門において5年連続でリーダーに選出されるなど、国内外で非常に高い評価を得ている同社は、組織が安全にAPIおよびAI駆動型アプリケーションを構築、運用、管理することを可能にする製品群を提供しています。

今回は、Kongを早い段階から導入し、製造業をはじめとした幅広い領域でサービス展開している株式会社NTTデータによるデジタルサプライチェーンプラットフォームサービス「iQuattro®」でのKong活用について、担当者のおふたりにお話を伺いました。


目次 [hide]

100以上がつながるサプライチェーンをAPIで統合管理
Kongは製品としても会社としても、当初の想定以上に伸びている
クライアントボイスを非常に大切にしている会社、という印象


プロフィール

松永 振一郎(まつなが しんいちろう)

株式会社NTTデータ
コンサルティング事業部 サプライチェーンユニット部長

2004年、株式会社NTTデータに新卒入社。Webシステムのスペシャリストとして業種業態を問わず多数プロジェクト支援を担当。2012年から2018年までNTTデータタイ・NTTデータマレーシアで、主に製造業向けのデータ分析事業責任者に従事。2018年に日本へ帰任し、現在に至るまでデジタルサプライチェーンプラットフォームサービス「iQuattro®」開発提供責任者として、同サービスの展開に従事する。

榎田 皓太(えのきだ こうた)

株式会社NTTデータ
コンサルティング事業部 サプライチェーンユニット
主任

2020年、株式会社NTTデータに新卒入社。1〜2年目はフルスタックエンジニアとしてデジタルサプライチェーンプラットフォームサービス「iQuattro®」の開発を担当した後、3年目以降で現在に至るまで、同プラットフォームの新サービス立ち上げに従事。開発をより早く、効率的に進めるためのサービス作りを進めている。

 

100以上がつながるサプライチェーンをAPIで統合管理


―― まずは、おふたりが担当されている「iQuattro®」について教えてください。またデジタルサプライチェーンプラットフォームとは、具体的にどういうものなのでしょうか?

松永:端的にお伝えすると、「iQuattro®」は主に製造業を中心とした「企業間サプライチェーン」のDXを支援するための製品です。自社の生産拠点やサプライヤなど、サプライチェーン上に散在する様々なデータを一元管理することで生産・物流・出荷などの最適化や、稼働率の向上、設備・製品の予防保守などを実現できます。これまでは1つの製品を作るために各サプライヤとメールやFAXなどで個別に情報の授受をしていましたが、「iQuattro®」を導入すれば、1つのデータマネジメント基盤上でやりとりできるようになります。

―― ということは、サプライチェーン全体で「iQuattro®」を使うということですね?

松永:はい。「iQuattro®」のAPIを利用していただいています。

―― 「APIエコノミー」という言葉もある通り、最近はAPI連携を前提にした製品作りも増えている印象です。APIだからこそのメリットについても、お考えを教えてください。

松永:データ連携にはいくつかの手段があると思っていますが、会社間でのデータ連携となると、各社間で利用製品も異なる可能性が多く、また、ユースケースに応じて細やかに必要な権限も設定しなくてはなりません。我々のように多くの企業様へユースケースに応じて柔軟にサービス提供する場合は、API以外での連携は難しいのではないかと考えています。

100社以上のサプライヤーを擁する大手電気機器メーカーでは、「iQuattro®」を活用することでサプライチェーン上の生産計画、実績、在庫状況を各社で共有・活用し、部品需給の適正化(需給調整の頻度が多いことから導入前は​過剰在庫・欠品が多かった)やサプライチェーンの最適化を実現している
( https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/case/2021/013100/ )

―― 100社以上を横串で繋ぐのは、現実的ではありませんね。実際に導入されるお客さまは、どんな課題を解消すべく「iQuattro®」を導入されるのでしょうか?

松永:お客さまによって細かい部分は当然異なりますが、ニーズを大まかにお伝えすると、サプライチェーンに関連する経営課題のご相談が多いです。と言うのも、特定の業務でデータ連携をするような製品はたくさんありますが、「iQuattro®」のように広範なサプライチェーン全体をターゲットとして企業間データを連携させる仕組みを用意している製品・サービスは少ないと思っていますので、そこに対する期待が強い印象です。

―― おふたりの「iQuattro®」における役割も教えてください。

松永:私は「iQuattro®」のサービス開発提供責任者として、サービスの成長に向けた各種マネジメントを中心に取り組んでいます。また榎田は、「iQuattro®」のサービス開発担当として、一部サービスは企画立案から開発までを担っています。

Kongは製品としても会社としても、当初の想定以上に伸びている


―― 「iQuattro®」でAPIマネジメントプラットフォームの「Kong」を導入された背景や経緯を教えてください。

松永:「iQuattro®」提供の経緯からお伝えします。2015年に製造業のお客さまとの共創プロジェクトとしてプロダクトを作っていきました。その後、2018年にver2.0として多くのお客さまへ展開するにあたり、APIマネジメントプラットフォームを導入する必要がありました。

その中で、最終的にKongを選定しました。

―― 具体的にどんな選定ポイントがあったのでしょうか?

松永:例えば、我々のお客さまには、プライベートな環境で提供してほしいというご要望があります。特に、主なお客さまが製造業ということで、「工場に置きたい」「オンプレにも対応させたい」といった声も多々寄せられていました。このようなお客さまの要望を満たすクラウドとオンプレの両環境で接続できるAPIプラットフォームとして、Kong社を選定いたしました。このような背景から、2018年より、「Kong Gateway」を導入しています。

「Kong Gateway」は、オンプレミスからクラウド、Kubernetes、サーバーレスに至るまで、あらゆる環境、プラットフォーム、実装パターンで稼働させることができ、また構成も柔軟に選択できる( https://jp.konghq.com/products/kong-gateway )

―― 「Kong Gateway」を利用されていて感じられているメリットを教えてください。

松永:お客さまごとにシステムを分離する観点については、想定通りのメリットだと感じています。

あとは機能というよりかはサービス展開に付随した観点なのですが、Kong社が業界ポジショニング的に大きく飛躍された点も、ユーザーとしては嬉しいポイントだと感じています。と言いますのも選定当時、選定した製品の成長と共に「iQuattro®」ビジネスを成長させたいという意図があり、積極的にスタートアップ製品を活用していました。我々が想定していた以上に成長した点は、Kongが期待を超えたポイントだと感じています。

―― 2024年8月には、KongとNTTデータで販売パートナー契約を締結されていますよね。

松永:そうですね。我々が使った上で「良い」と判断した製品は積極的に提供していきたいと考えており、Kong社と販売パートナーとしての協業を開始しました。今後は製造業以外のお客様、例えば金融や公共領域のお客さまに対しても一つの選択肢になればいいなと考えています。

―― 「iQuattro®」の新規サービスを担当されている榎田さんから見たKongのメリットについても教えてください。

榎田:私は「エンジニアによる開発作業を、より楽にしていく」というコンセプトで新規サービスを作っているのですが、サービス提供の観点としては大きく2点のメリットがあると感じています。

まずは「マルチクラウド」です。先ほどハイブリッド環境の話が出てきましたが、Kongでは特定のクラウドに縛られないという点もありますので、例えば今まで単一のクラウドで提供していたものを別のクラウドに移行するとなった際も、そのまま運用管理できる点が大きいと感じています。と言うのも、現行のお客さまの大半は基本的に単一クラウドでの稼働となっているのですが、私が現在担当している新規サービスではマルチクラウド接続が必要になってくる予定です。

―― 運用コストの削減に伴う全体的なコスト削減に寄与するということですね。

榎田:それからもう1点は「マルチテナント」という観点です。先ほどからお伝えしている通り、「iQuattro®」ではAPIを活用する形でデータのやりとりを簡易化するようなサービスを提供しているので、マルチテナントの環境で運用する場合には、より細かい認証やアクセス管理が必要です。Kongのサービスを使えば、統一された設定の元でルート単位での認証などの設定・運用ができるようになっています。お客さまやプロジェクトが増えれば増えるほど煩雑になる部分なので、今後さらに重宝すると考えています。

松永:今のマルチテナントの話に加えるとすれば、「iQuattro®」は1つのプラットフォーム上で管理するため、提供先毎のサービス境界の管理が非常に重要になってきます。別の会社さまの設定が他の会社さまに影響してしまうとなると、提供サービスの信用が失われてしまうためです。その信用を守るという観点で「iQuattro®」を設計していますし、そこに対してKongの力も不可欠だと感じています。

クライアントボイスを非常に大切にしている会社、という印象


―― Kongの今後の活用予定について、おふたりの展望を教えてください。

榎田:開発をより楽にするという観点ですと、例えばアプリケーションがデプロイされると同時にKongの設定も組み合わされるような単純なゲートウェイとしてだけではなく、より「iQuattro®」の中にKongを組み合わせる形で、製品としてのメリット・強みを生かしていきたいと考えています。

またDevOpsでいう運用やテストに時間がかかってしまっている状況や、何かあった際には環境を迅速に戻せるようにするという点においても、Kongは関連する開発ツール、例えば Kong Insomniaなどが揃っているので、そのような部分をもっと活用する形で開発の効率化を進めていきたいと思います。

松永:私としても榎田がお伝えしたような、「iQuattro®」を使った価値創出ができるアプリケーションをもっと増やしたいと考えています。お客さまがアプリケーションを活用するときのベースとなるものがKongだと思っています。最近では製造業と金融業の組み合わせでのサプライチェーンファイナンスのような、異業種間でのご利用ケースも増えてきています。公共分野においては、デジタル庁の推奨APIゲートウェイ(※)にも認定されていますしね。多様な用途でも柔軟に活用できるプラットフォームとして、引き続きKongに期待しています。

※デジタル庁傘下のデータ社会推進協議会において、デジタル庁が推進するデジタル田園都市国家構想の実現に向けた、データ連携基盤の機能要件とコアとなる部品の調査(生活用データ連携に関する機能等に係る調査研究調査報告書)が実施され、その報告書の中で「どの項目においても「Kong Gateway」が優れた結果となっており、オープンソースAPIゲートウェイの中では安定性、利便性、今後の発展など様々な面で期待できる。本調査結果より、「Kong Gateway」がAPIゲートウェイの公認モジュールに相応しいと判断する」 との評価が記載されている。さらにその上で、APIゲートウェイの推奨モジュールとして「Kong Gateway」が選定されている(詳細はこちら)。

―― 2023年11月にはKongの日本法人も立ち上がったので、コミュニケーションもより円滑になることが期待できますね。

松永:おっしゃる通りです。Kongを利用開始した当初は、Kong本社と直接交渉をしていました。先方に日本人の方も数名いらっしゃいましたが、我々のプラットフォーム・ビジネスが、複数社をまたがるサプライチェーンを軸に展開していくという少し特殊な事情もあり、理解していただくのに苦労しました。日本法人ができたことで、国内市場の事情をより理解いただきながらご対応いただけているので、我々としてもビジネスにより集中できる環境になったと感じています。

榎田:エンジニア目線でお話しすると、ドキュメントが日本語ベースになったのは非常にありがたいですね。問い合わせ対応についても日本語でスムーズにできるので、開発に集中しやすくなったと感じています。

―― 最後に、Kongの導入を検討している企業・エンジニアの方へ一言ずつお願いします。

榎田:システム開発を進めるにあたって、設計からテスト、運用まで様々なフェーズがありますが、それらがもっとシームレスにつながってほしいと思っています。私たちが主に活用しているのは「Kong Gateway」ですが、他にも様々なKong製品があって、開発者体験の向上に大きく寄与する選択肢が広がっていると感じているので、開発者の方にはぜひ使ってみていただきたいと思います。

松永:私自身、技術者として、Kongは「筋が良い」製品だと感じています。もちろんオープンだからというのは理由の一つです。他にも例えばNginxをベースにした製品ということで、Luaのとっつきにくさはあるかもしれませんが、APIとして必須の高い処理能力を発揮しやすいだろう等、全体的な筋の良さを感じています。製品としての設計思想に納得できることは、選定を進める上で大事にしているので、そういう意味でもKongを選んで間違いなかったなと考えています。

あと、これはあくまで一つのエピソードではありますが、これまでも複数回Kong社の幹部の方と話す機会はあったのですが、直近では2024年6月にプロダクト開発の責任者であるReza氏が来日されて、お話する機会がありました。その際にも感じたのが、クライアントボイスを非常に大切にされている会社だな、ということです。世界中にたくさんいる顧客の中の一社に過ぎない弊社の要望や意見に真摯に向き合ってくださって、レスポンスも早い。そういった姿勢も、Kongを使うメリットの一つだと感じています。

編集後記

海外発の製品の場合、日本から要望を出したとしてもなかなか聞き入れてもらえないことが多いと思いますが、「Kongの場合は真摯に向き合ってくれ必要に応じて迅速に対応してくれる」と、松永さまがインタビューの中で強調されていました。日本法人が設立されたことで、今後より一層深いコミュニケーションも期待できるでしょう。開発効率を高める一つの選択肢として、APIマネジメントプラットフォームを検討する際には、Kongを検討してみてはいかがでしょうか。

取材/文:長岡 武司
撮影:法本 瞳