Verifone、Kongを導入してオムニチャネルのグローバルな決済ソリューションを構築

電子決済システムの代表的企業がKongでインフラを統合

POSソリューションの世界的企業

Verifoneは1981年創業で、店頭の決済端末やコマースソリューションを手がける世界的企業です。同社の決済端末は全世界で3500万台以上導入されています。クレジットカードやデビットカードを持つ人なら、誰でも一度は利用しているはずです。

Verifoneのソリューションは年間100億件以上に及ぶトランザクションをセキュアに処理し、小売業者と消費者、および両者を結ぶ企業を支えています。Verifoneは世界150カ国以上で事業を展開しており、顧客企業の業種は、金融サービス、小売、石油、飲食、ホスピタリティ、運輸、ヘルスケアと多岐にわたります。

現在Verifoneは世界のほとんどの地域で最大の決済ソリューション事業者ですが、eコマースのニーズを満たすために、さらなる進化を必要としていました。Verifoneが重視したのは、店頭決済とeコマースの両方に対応するオムニチャネルソリューションを開発し、eコマースを専門に扱う企業との競争力を維持することでした。

業界 金融サービス

地域 北米

使用事例 セキュリティとガバナンス

導入時期 2018年

75%
20種類の地域固有の決済システムを単一のグローバルなシステムに統合し、Kongを利用してすべてのトラフィックを管理し保護することで、TCOを75%削減し、市場投入サイクルを20分の1に短縮
数百時間
OpenAPI仕様に準拠したAPIコントラクトの生成と保守の自動化や、APIトラフィックの監視の一元化によって、開発チームの作業を月あたり数百時間削減
課題

eコマースソリューションの調達者が求めるのはAPIドキュメントの質

このオムニチャネルソリューションの実現はVerifoneのグローバルアーキテクチャチームにとって課題となりました。eコマースと店頭決済は完全に別のシステムで対応するのが一般的だからです。

VerifoneのリードアーキテクトであるHans van Leeuwen氏は次のように振り返ります。「Verifoneの決済サービスを利用するサードパーティーに向けて、まずVerifoneのAPIを公開する必要がありました。対象は例えば、オンラインストアを持つWebサイトなどです」

通常、Verifoneのeコマースソリューションを調達するのは開発者です。多くの合、複数のベンダーのAPIドキュメントを比較して、APIの構成が最も優れているソリューションを選びます。

「分かりやすくて質の高いAPIはとても重要です。だから構成をできる限りシンプルにする必要がありました。それでも、APIドキュメントを標準化する手だてがなければ、APIを導入してもらいにくくなり、Verifoneが目指すオムニチャネルの決済ソリューションの実現も難しくなってしまいます」(Van Leeuwen氏)

さらに、Verifoneの事業がグローバルな点も、話を難しくしていました。

「決済は一見単純そうですが、実際は地域ごとの法令に基づく要件や、お客様の好みがあります。地域ごとの要件には合わせなくてはなりませんが、その一方で、世界的な有名ブランドや大手のお客様は、地域ごとに別々のシステムにログインして決済を管理することは望んでいませんでした」(Van Leeuwen氏)

Verifoneの顧客企業が望んでいたのは、すべての決済処理や、Verifoneとのあらゆるやり取りを、1つのグローバルなシステムで行うことでした。

ソリューション

Verifoneは軽量かつ柔軟なAPIゲートウェイとしてKongを採用

Verifoneのグローバルアーキテクチャチームは、グローバルなオムニチャネルソリューションを実現するためにはAPI管理ツールを導入して決済システムをマイクロサービスアーキテクチャに移行することが不可欠だと判断しました。

それまでは、地域ごとの決済システムはいずれもモノリスで、APIをそれぞれ別々に公開していました。APIゲートウェイの導入はVerifoneにとって初の取り組みです。

「マイクロサービスへの移行を進めるなかで、APIゲートウェイが必要だと認識しました。マイクロサービスを公開するための抽象化レイヤーが必要でした。内部のマイクロサービスすべてをエンドユーザーに直接公開するのは問題ですから」(Van Leeuwen氏)

グローバルアーキテクチャチームはさまざまなソリューションを検討しましたが、多くは肥大化したソリューションで、候補から除外しました。Van Leeuwen氏とチームは、プロセスの複雑化と低速化につながる、余分な構成要素を排除した無駄のない製品が必要だと認識していました。

同チームがKongに好感触を抱いた最初の理由は、実績のあるテクノロジースタックを基盤とした軽量なAPIゲートウェイであることと、企業としてのKongがマイクロサービスに主眼を置いていることでした。

「さらに検討を進めたところ、Kongは我々が求めるユースケースの多くに対応できるという点で群を抜いていました。柔軟なプラグインアーキテクチャを活用して、ユースケースごとに必要な機能を取捨選択したり、モダンシステムとレガシーシステムの両方のAPIを管理したりできます。またチームは、負荷分散のニーズについてもKongでの対応を計画し、負荷分散用のソリューションを別途購入するコストを節約しようと考えました」(Van Leeuwen氏)

Kongはあらゆるデプロイモデルに柔軟に対応できる点でも優れていました。

「地域によって、オンプレミスやプライベートクラウドでの運用が規則で義務づけられているところもあれば、パブリッククラウドを利用できるところもあります。Kongはそのすべてに対応できます」(Van Leeuwen氏)

ソリューション

統合システムを構築してKong Enterpriseで管理

VerifoneはKong Enterpriseを採用し、各地域をカバーするゲートウェイとして機能させています。

「以前の決済システムは地域別で20種類あり、いずれもモノリシックアーキテクチャでしたが、マイクロサービスアーキテクチャの単一のグローバル決済システムに移行しました。Kongを利用して、一元的な保護、管理、監視が可能です」(Van Leeuwen氏)

APIを一元化すると管理統制の負担が減ります。VerifoneはKong Enterpriseを利用して、地域ごとの開発チーム向けに別々のワークスペースを作成し、ロジックを分離しています。Van Leeuwen氏のチームはすべての地域のAPIトラフィックに1カ所からポリシーを適用し、制御できるのです。

「Kongにはすぐに使える認証プラグインが数多くあり、市場投入サイクルを短縮できます。当社の既存のレガシーシステムにも、今後の新たな展開にも対応できますし、独自のプラグインも開発できます」(Van Leeuwen氏)

レート制限ポリシーも効果を発揮します。保守性を確保し負荷を分散することで、障害のリスクを抑えることができます。

システムが一元的されていることにより、ポリシーの適用以外にも、システムが処理するトラフィックのログ記録や参照も1カ所で対応できます。

「OpenAPI 3.0準拠のAPIドキュメントの標準化と保守にもKongを利用しています。APIコントラクトをKongで自動生成することにより、API仕様書の品質を向上させ、エンドユーザーに影響する破壊的変更のリスクを軽減できます」(Van Leeuwen氏)

Van Leeuwen氏のチームは、オンプレミス、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド環境でのKongの利用に加えて、KongとKubernetesとのネイティブな連携も今後活用していく計画です。

「Kubernetesはロードマップに入っています。KongではCRDを使ってKubernetesとゲートウェイを構成できます。他のソリューションにはKubernetesをネイティブにサポートしていないものが多く、かなり差があります」(Van Leeuwen氏)

成果

市場投入サイクルを短縮

Kongの導入によって、Verifoneは市場投入サイクルを大幅に短縮しました。以前は決済システムが地域ごとに分かれており、管理もビジネスロジックもばらばらでしたが、現在ではすべての地域を1カ所で管理できます。

各地域の開発チームは、認証や認可などのビジネスロジックに時間を費やす必要がなくなった分、機能の開発をスピードアップできるようになりました。

Kongではシステム全体のポリシーの監視と管理を一元的に行うことができ、可視性が高まることから、グローバルアーキテクチャチームの生産性は大幅に向上しました。

加えて、APIコントラクトの標準化と管理についても、効率性が高まりました。さらに運用面では、障害があってはならない企業で求められる高可用性とゼロダウンタイムに対応できました。

「世界のキャッシュレス決済の半数近くでVerifoneの製品が使われており、影響は極めて広範囲に及びます。Kongを導入することで我々のビジネスが効率化され、プラスの効果が得られているのは喜ばしいことです」とVan Leeuwen氏は言います。

「Verifoneの製品・エンジニアリング部門には、セキュリティ、スケーラビリティ、可用性という3つの柱があります。Verifoneは世界経済を支える存在です。そして今では、Kongも同じ立場にあります」